ナラタージュ 懐中時計 動い た

ナラタージュの概要:高校生の工藤泉は葉山という教師に出会い、次第に恋心を募らせるようになる。自分の気持ちを伝えられぬまま卒業した泉だったが、文化祭の演劇の手伝いをお願いされ、葉山と再会することとなった。目次※配信情報は2020年4月現在のものです。配信状況により無料ではない場合があります。映画の配給会社に勤める工藤泉は、後輩の宮沢から持っていた古い懐中時計について聞かれた。その懐中時計には思い出があり、泉は当時のことを振り返り始めた。泉は高校生の頃、クラスで孤立しイジメにあっていた。雨の日、屋上から飛び降りようと考えたが実行できず、ずぶ濡れで校舎を歩いていた。その時、一人の教員に声を掛けられる。葉山貴司というその教師は、演劇部に入ってみないかと彼女をスカウトしてきた。心の拠りどころが無かった泉は葉山の言葉に誘われるままに演劇部に入った。泉は次第に葉山を一人の男性として意識するようになり、お昼休みを葉山の所で過ごすようになっていく。自分の気持ちを伝えたくなった泉は、恋文を渡そうと葉山を訪ねた。だが、葉山から過去の話を聞かされ、告白をためらってしまう。葉山には妻がいたが、母と同居したことで精神的に不安定になり、遂には家に火を放って母を焼き殺そうと考えるまでになってしまった。妻は納屋を燃やしただけだったが、それにより二人は距離を置くこととなり、妻は東京の実家に戻って行ったのだそうだ。葉山は泉に、妻とは別れたと告げた。卒業の日がやってきた。泉は葉山に別れを言いに来たが、その時、不意に葉山からキスをされる。しかし、その後に何があるわけでもなく、二人の関係は途絶え、泉は大学に進学していった。大学生になってからしばらくして泉のところに葉山から連絡が来る。演劇部の部員が少ないので文化祭の劇を手伝ってくれないかという誘いだった。泉はかつての母校に戻り、懐かしい顔ぶれと後輩たちに再会する。その場には、別の大学に進んだ友人が連れてきた小野怜二という青年もいた。演劇経験があったため、連れてこられたのだ。葉山との久しぶりの再会に胸をざわつかせる泉。泉に対して小野も好意を持っていた。今回の劇の主役をやる高校生の柚子は明るい性格だったが、何か悩みを抱えているようだった。稽古は順調に進んで行ったが、ある日、葉山に予定ができて稽古が中止になる。夜、葉山から電話をもらった泉が駆けつけると彼は酒に酔い、いつもと違う表情を見せていた。妻の父親から連絡を受けた葉山は、彼女の状態が回復していることを知らされ、また一緒に暮らさないかと言われていた。思いがけないことに動揺する葉山に泉は、何かできることはないかと問いかけた。葉山の家にやってきた二人は、お互いの気持ちを正直に伝えあう。近づきたいという気持ちに泉は積極的だったが、葉山はまだためらいがあった。そのため、二人は一線を越えることもできず、狂おしい時間だけが過ぎていった。何事も無かったように稽古が続き、やがて本番の日がやってきた。舞台は大成功したが、それは葉山との接点を失うことでもあった。寂しそうにする泉に小野は声を掛け、今から自分の実家に行こうと誘った。小野の優しさに触れた泉は、彼の気持ちを受け入れて付き合いだす。泉と小野は順調に関係を築いていったが三ヵ月が過ぎようとする頃、深夜に突然、葉山から電話が来た。話したくなったという葉山に、泉はためらいがちに小野と付き合っていることを告げた。それを知った葉山は謝り、もう連絡はしないと電話を切った。後日、その電話のことを小野に尋ねられる。泉は正直に答えたが、電話があったことをすぐに言わず、内緒にしているような態度に小野は不信感と嫉妬を募らせていった。二人の間にはギクシャクした空気が流れ始める。夜の帰り道、誰かに後を尾行されている気配を感じた泉は、怖くなって小野に電話した。だが、小野からは冷たい態度を取られてしまう。泉は高校時代に葉山に渡そうとしていた恋文を未だに大切に持っており、小野はそれに気がついて激怒していた。夜道が怖くなった泉は自然と葉山の家の前に来てしまう。帰ってきた葉山と鉢合わせるが、バツが悪くなって早々にその場を去った。泉は恋文を破り捨て小野に謝罪すると彼の元へと戻って行った。ある夜、再び葉山から電話があった。しかし、それは柚子が飛び降り自殺をしたという悲しい知らせを告げるものだった。柚子は一命を取り留めていたが意識不明で危険な状態だった。演劇部員と泉たちが集められ、落ち込んだ表情の葉山が状況を説明した。その夜は一度帰ろうということになり、小野は泉を連れて自宅へと戻ったが、その時、泉は葉山の所に戻ると言いだす。小野は熱心に自分の思いを告げたが泉もまた、同じように葉山を思っていた。泉は小野に別れを告げて葉山の元へ。柚子に何もできなかったと自分を責める葉山に泉はそっと寄り添った。柚子は知らない男に強姦されており、そのことで悩んだ末に自殺を図ったのだ。入院から三日後、柚子はそのまま帰らぬ人となった。泉は葉山から今までのことを正直に告白される。妻に何もしてあげられなかったことを悔いていた頃に泉と出会い、泉から頼りにされるうちに次第に自分も泉に寄りかかるようになっていったのだと。葉山は東京に行って妻と再び暮らすことを決めていた。泉は最後に葉山の家に行きたいとお願いし、そこで二人は初めて関係を持つ。葉山は父が残していったという懐中時計を取り出すと泉に渡した。翌朝、夜も明けきらぬうちにベッドから抜け出し、葉山を起こさないようにその場を去った泉だったが、電車の窓から見送る葉山の姿を見つけて号泣する。懐中時計の針は止まったままになっていた。葉山がネジを巻いてくれたが、それが切れて以来、そのままになっていたのだ。会社で眠りこけていた泉が目を覚ますと、宮沢があることを教えてくれた。懐中時計の蓋の裏には文字が彫ってあったが、それはポルトガル語で“幸せであるように”という意味なのだと。ネジはいつの間にか宮沢によって巻き直されていた。動かなかった時計の針が時を刻み始めていく。まるで、泉の心のように。純愛を描いている映画だと思う。そのせいで現実感が少し乏しく、ファンタジーのような印象が強い。誰もが一度は憧れそうな関係が時間をかけて描かれているが、感情に訴えてくるものは弱い感じがした。同じような経験がある人ならば共感を生むだろう。モヤモヤした感情を表現するにはある程度の時間が必要だが、浮き沈みの少ない中で2時間越えの上映時間はさすがに長すぎた。登場人物は皆、子供っぽい純粋な感情で動いており、ある意味では観る者のピュアさが試されているのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)この記事をシェアする

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