上鳴 電気 嫌 われ


1 of the novel series "爆豪派閥のキャラ変!".

会員登録. 山岳エリアの敵を全滅させた悠達は、今後の作戦について話し合っていた。 既に愛着が湧き、年季の入った感があるタングステン製のメイスを置いて、不機嫌な様子で断言する。 「感電しました」 「あ……すみません。敵がちょうど良く集中していたので」 「俺が引き付けてたんだから当たり前だろ」 「誠に遺憾に思っています。また課題が見つかってしまいました」  犯人である八百万百が返してきた。許せないと思った。 ついさっき、彼女が発案した作戦のせいで悠は網にかかり、放電された。防御性能に優れた戦闘服でなかったらやられていただろう。 「政治家みたいな謝り方しやがって……。そういえばお前の家は金持ちらしいなあ? 出すもん出してもらおうか」  そして脱げと口走りそうになったが堪える。彼女のコスチュームは面積が少ない。レオタードの胸元に切れ込みを入れた、痴女にしか着れない服だ。本当に脱がれると困るし、女子の裸体を見たとなれば自分のクラスでの地位が危うくなってしまう。 「ヤバイよ上鳴。あんたが電気なんか流すから、天羽の頭やられちゃったじゃん」 「やられてねぇよ。お前らも許さんからな。先生に言うぞ……あ」  メイスを振るうのが楽しくなってすっかり忘れていた。 入り口付近では相澤先生が戦っていたのだ。あっちには強そうなのもいたし、そろそろ危ないだろう。 行くか。顎に手を添え、悠は思った。  ◇  数が多い。相澤消太━━イレイザー・ヘッドは歯噛みした。  "個性"である『抹消』を用いても、相手の身体能力まで削げるわけではない。後ろの生徒を守るために孤軍奮闘を続けてはいるが、こちらの体力にも限りがある。 下級のヴィランをいくら倒したところで現状を打破できない事は明らか。 黒い霧に吸い込まれた生徒達の安否も定かではないのだ。ここは慎重に、そして確実な手を取らなくてはならない。  右に三人、左に二人。相澤は首に巻いてある帯状の捕縛武器━━炭素繊維に特殊合金を編み込んだ特別製だ━━を解き、左右に向けて展開する。それは意思を持ったような巧みさで五人のヴィランに巻き付いた。 全身で支え、腕で操る。指でさらに細かいコントロールを付加し、神業じみた体重移動を乗せると、捕縛した五人の体が空中で衝突した。  まだ止まれない。水色の髪の、おそらくはリーダー格だろう男に走り寄る。 「動きが鈍いなあ、イレイザー・ヘッド……」  舐めるかのような囁き声。二人を殴り倒す。 「もう四〇人は倒されちゃったかな。今日はサブ・ターゲットがいるからなあ……増援を呼んだ甲斐があった」  捕縛武器で足を掬い、一人が転倒。それに巻き込まれてもう一人がつんのめる。 一方で捕縛しておいた巨大な異形タイプのヴィランを釣り上げ、勢いを付けてそこに叩き落とした。 もう少し。 行き先を阻もうとしてくる二人を踏み越え、さらに接近。 幸い、断続的に現れていた敵の増援は少し前から出てきていなかった。単に弾を撃ち尽くしたのか、それとも他のエリアに戦力を割いているのかは分からない。 だがチャンスは今しかないだろう。  相澤の『抹消』は目を酷使する。眼精疲労が積み重なれば視力の妨げになり、それが致命的な結果を生み出す可能性もあった。 「勝負を決める……!」  ようやくリーダー格のヴィランを追い詰めた。 近くにいるのは異形タイプの黒い大男のみ。こちらは気味が悪いほど微動だにしない。 「アンタの"個性"は知ってるよ」 「それがどうした」  数度の手合わせだけで、相手の力量は把握できた。 スピードはそこそこ、技量はそれなり。パワーは脅威ではない。"個性"は消せる。 オールマイトを殺すと息巻いていた割には、拍子抜けする強さだった。 つまりは特殊能力偏重タイプなのか。いずれにしろ、『抹消』が効いている内に倒さなくてはならない。 「分かってんだろ……? 自分が勝てないって」  疲労の色が濃い相澤を嘲笑うかのように、ヴィランが囁いた。 焦りで狙いがブレているわけではない。 背後の生徒を守り、自身の"個性"が持つタイムリミットに追われている相澤と違い、敵は自身の優位に守られたまま、全ての力を回避に傾ける事が出来る。 言われた通りだ。このままでは不味い。 「そろそろだ」  瞬きをした、刹那にも満たない時間。守りに徹していたヴィランが突如として動きを変え、繰り出された相澤の拳を掴んだ。  焼けるような激痛と、未知の違和感。 (手が崩れた……!?)  皮膚がひび割れたように『崩壊』していく。それでも慌てる事なく再び『抹消』し、相手の腹を蹴り飛ばした。 「く……っ」  もう右の拳は使い物にならない。これでは目の前の敵を倒せるかどうかも怪しい。 「相手を追い詰めた時ほど楽しい事は無いよなぁ……。なんとか凌ごうと思っていたのに叶わない。どんなに経験を積んでも自分の絶望感には勝てないんだ」 「くだらん。貴様らくらい、手足の一本でも残っていれば充分だ」 「そう言うと思ったよ。だから……」  周囲にまたもやワープゲートが開いていく。 六〇人以上のヴィランが、下卑た笑みを浮かべながら次々と出てきた。 「まだ余力を残しておいた」 「…………!」  一瞬だった。恐怖に呑まれたわけではない。敵との戦力差を加味し、自分の命を担保に入れて、何とか最悪の事態だけは避けようと思考を巡らせた、ほんの僅かな時間。  背後に巨大なヴィランが立っていた。 「やれ。"脳無"……!」  振り向いた時には、黒い巨腕に視界を覆いつくされていた。 やられる。 「━━残念だが」  鋭い打撲音。大型ヴィランの上体が揺らぐ。相澤の顔を掴もうとしていた右腕は、すんでの所で逸らされた。 「そうはいかない」  黒いコスチュームを着た少年が、銀灰色の鈍器を肩に担いで立っている。背中をこちらに向けているが、誰だか分かった。 天羽悠だ。 「お前……」 「どうですか今のタイミング。ヒーローっぽいでしょ」   そう言いながら彼は腰の道具入れからフィルムケース大のスプレーを取り出し、それを相澤に放ってきた。 治療用の薬剤だ。痛み止めに消毒はもちろん、細胞活性薬で自然治癒力も増す上、止血の効果があるので包帯もいらない。これ一本で完璧に近い応急処置が出来る。 傷ついた拳に吹きかけると、白い粉末が怪我を覆い隠した。 「下がれ。後ろに他の生徒が集まってる。お前も合流して……」 「それは現実的じゃないですね。先生を置いていくのはまだしも、そうすると常に後ろを気にしなくちゃならなくなる」 「命令だぞ。言う事をきけ」 「だからお断りします。ゴミに背を向けるくらいなら、除籍された方が億倍マシですよ」  禍々しい形状のメイスを地面に降ろし、天羽悠は首の骨を鳴らす。絶望的に不利な状況にもまるで動じていない。 「天羽悠はお前か?」  リーダー格のヴィランが言ってきた。 「汚い口で俺の神聖な名前を呼ぶな」  心底嫌そうな声を無視し、ヴィランは嬉しそうに笑った。 「天羽悠。パーディションの弟子。サブ・ターゲット……!」  パーディションは犯罪者の名前だ。あらゆる所に現れて、自身が悪だと思った者を断罪する。 一〇年以上前から活動しており、その素性は底知れない。パーディションという名はマスコミが付けたものだ。 もちろんヒーロー業界からも敵視されており、相澤も捕縛作戦に参加した事があった。結果は十数人いたヒーローチームが相澤を残し全滅。"個性"さえ使われぬまま、犯罪者は夜闇に消えた。 「困ってるんだよ皆……」 「あ? 俺の方が困ってるわ」 「俺の"先生"が言ったんだ。お前の"先生"に会いたいって」 「お前キモいぞ」 「ちょうど良い。オールマイトがいないんだ。先にお前を片付ける」  お互いに会話を放棄している。だが敵の統制は取れているようだった。 会話の最中にも隊列を崩さず、決して警戒を解かない。 「あいつらは俺に用があるみたいなんで、撤退は悪手。ここで抑え込みます」 「だが……」 「相澤先生、あなたはまだ倒れちゃいけない人だ。それに俺の"個性"なら、この状況も打開できる」  天羽悠が置いたメイスの硬度と重量で、床が僅かに割れている。その亀裂が大きくなり、ヴィラン達に向かって一直線に伸びていった。 そして小規模な爆発。 粉末となったアスファルトが煙幕の役目を果たした。 「行きます。三〇秒ください」  首に巻いていた黒いマスクを鼻まで上げ、天羽悠が飛び出していく。凄まじいスピードだ。 恐れなど微塵もなく、場違いなほどリラックスしている。  まず煙幕から出てきた一人にメイスを投擲し、胸を陥没させる。倒れる前に得物を拾い、さらに跳躍。 腰から伸ばしたワイヤーで飛行能力持ちのヴィランを絡め取ると、そいつの肩口に向かって鈍器を降り下ろした。 遠くにいる相澤の耳にも届く、生物が潰れる音。直撃を受けていないはずの腕がおかしな方向に曲がっている。 天羽悠は動かなくなった相手を踏み台にして、もう一体の羽付きに襲いかかった。空中でもある程度は動けるらしい。  しかし回転のかかった攻撃をヴィランは何とか回避。羽がある分、空中での機動力では絶対に勝てない。空振りをしたため、悠の体はメイスに引っ張られるようにして落ちていった。 いや、まだだ。いつの間にか羽付きヴィランの胴体にワイヤーが巻き付けられている。 悠のコスチュームには袖口にもワイヤー・シューターが内蔵されていたのだ。  たった一本の細い線を巧みに操り、あっという間に敵との上下を入れ換える。力任せに羽をちぎられたヴィランは一五メートル上から落下してきた。続いて悠も降りてくる。 飛び道具や射撃系の"個性"を持つ敵が対空攻撃を始めるも、それさえメイスを盾にして防ぎ、軽度の物はコスチュームが弾いてしまう。 呆れた戦闘力だ。間違っても指導の参考には出来ないと、相澤は思った。  超重量を誇る鈍器は存在するだけで位置エネルギーを有しており、それに掴まれば空中でもある程度の姿勢制御が出来るらしい。 そうして、さらに落下エネルギーと回転時の遠心力を付加した一撃を敵陣の真ん中に叩き込む。  ヴィランの一団は後退し、天羽悠を囲んだ円の形を作った。 「こ、こいつおかしいんじゃねぇのか」 「ガキだって聞いてたのに」 「そうだ。俺はパーディションに復讐できると思って……」  むしった羽を足元に投げられ、ヴィラン達がたじろいでいる。 天羽悠は地面にメイスを突き立てたまま、彼らを睥睨(へいげい)し、ふっと笑った。 「つくづく見ていて恥ずかしくなる奴らだな。ドブから出てきたと思ったら、周りを汚す事しかできないのか。良心や常識が残っているのなら、今すぐ舌を噛みきった方がいいぞ」 「な、なに……?」 「だってそうだろう。こんなガキ一人にビビって戦う事さえ出来ない。貴様らはヴィランとしても失格だ。無駄な人生だったな。生まれ変わったら良い虫になるんだぞ。今より役に立つ」  それはまさしく挑発だった。逆に分かりやすいくらいだが、ヴィラン達は無視できない。 「ふざけやがって……!」  一人のヴィランが殴りかかる。悠は上体を逸らして容易く回避。だが、その相手の口元から火が零れた。 炎を吐ける"個性"の持ち主のようだ。間違いなく当てるための距離。大振りの攻撃は囮だ。 しかし悠は鋭いステップで距離を詰めると、顎を押し上げて無理やり閉口させた。鼻から火が漏れ、逆流した炎にヴィランがのたうち回る。  てっきりそのままトドメを刺すのかと思ったが、悠はまたもメイスの場所まで戻った。 後退。ただそれだけの事実がヴィラン達を焚き付けた。 「続けぇ!」  堰を切ったように包囲を狭め、我先にと飛びかかってくる。 六〇対一。 絶望の中心で、それでも天羽悠は口元に笑みを浮かべた。  鈍器の柄尻を蹴り、天高く跳躍。 次の瞬間、メイスを中心に特大の爆発が巻き起こった。

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